障害年金の基礎知識

ADHD(注意欠陥多動障害)での障害年金の受給について

ADHDはご病状により障害年金の対象となるご病気です。

ADHD(注意欠如・多動症)は、注意力の欠如、多動性、衝動性を特徴とする発達障害です。この障害は子どもに多く見られますが、大人にも影響を及ぼすことがあります。ADHDは、脳の神経伝達物質に関わる問題に関連しており、主に以下の3つの症状に分けられます。

  1. 注意力の欠如:細かいことに注意を払えなかったり、物事を最後までやり遂げられないことがあります。また、指示を聞き逃したり、忘れ物が多くなることもあります。

  2. 多動性:落ち着かず、じっとしていることが難しいと感じることが多いです。座っているべき場面でも、体を動かしてしまうことがあります。

  3. 衝動性:他の人の話を最後まで聞かずに話し始めてしまう、思いつきで行動してしまう、順番を待つことが難しいといった症状が現れます。


ADHDの原因は明確には分かっていませんが、遺伝的な要因、環境的な要因、そして脳の機能に関連があるとされています。例えば、脳の前頭葉や神経伝達物質(ドーパミン)の働きが関係していると考えられています。
社労士
社労士

治療には、薬物療法(主に刺激薬や非刺激薬)が使われることが多く、行動療法認知行動療法も有効です。また、生活習慣や学習方法の改善が支援となる場合もあります。

ADHDでの障害年金の受給

障害年金の受給要件

初診日の特定

障害年金の請求において初診日は大変重要な意味を持ちます。

初診日とは当該病気によって初めて医師または歯科医師の診断を受けた日を言います。病名が決まった日ではなく症状が出て初めて病院に行った日が初診日となります。

同じ生来的なご病気である知的障害の場合は初診日は特別な扱いがなされ誕生日が初診日となりますがADHDを含む発達障害の場合は原則どうり初めて病院を受診した日が初診日となります。

知的障害と発達障害で異なる扱いがなされるのは発達障害の場合症状が大人になってから顕著になる場合があるということが理由として挙げられます。

このためADHDによって障害年金を受給するためにはまず初めに、初めて病院を受診した初診日を特定する必要があります。原則的に初診日はカルテに基づいて作成される証明書(受診状況等証明書)で行いますが、初診日から現在まで同じ病院にかかっている場合には受診状況等証明書が不要となります。

障害年金の初診日とは

保険料の納付要件

ADHDによる障害年金を受給するためには保険料の納付要件を満たす必要があります。

発達障害と同じ生来的な障害である知的障害の場合には上記のように初診日が誕生日とされるため保険料納付要件を満たす必要がありません。

これは20歳前には国民年金保険料の納付義務がないためです。 ad HDを含む発達障害の場合には原則どうり初診日以前に国民年金保険料の納付要件を満たす必要があります。

【保険料納付要件】

障害の原因となった傷病にかかる初診日の前日においてその初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があるときはその被保険者期間にかかる保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間がその被保険者期間の2/3以上を満たしている必要があります。

また初診日の前日において初診日の属する月の前々月までの一年間に保険料納付済期間および保険料免除期間以外の被保険者期間がない(滞納期間がない)場合は保険料要件を満たしたこととされます。

障害年金の保険料納付要件について

障害年金の等級に該当するご病状

障害年金を受給するためには障害年金の決められた等級に該当するご病状である必要があります。

障害年金は障害基礎年金(初診日の段階で国民年金に加入していた場合)には1級と2級、障害厚生年金(初診日の段階でご自身で働かれていて厚生年金に加入していた場合)には1級~3級の等級がありそれぞれの等級にご病状が該当する必要があります。

【等級と病状】

1級・・・発達障害があり社会性やコミュニケーション能力が欠如しておりかつ著しく不適応な行動が見られるため日常生活への適用が困難で常時援助を必要とするもの

2級・・・発達障害があり社会性やコミュニケーション能力が乏しくかつ不適応な行動が見られるため日常生活への適用に当たって援助が必要なもの

3級・・・発達障害があり社会性やコミュニケーション能力が不十分でかつ社会行動に問題が見られるため労働が著しい制限を受けるもの

アシスタント
アシスタント

ADHDで障害年金を受給するためにはあらかじめ決められた障害年金の等級に病状が該当する必要があるんですね。

そうなんだ。障害年金の審査は病状がこの等級に該当しているかどうかで判断されます。 ADHDのために就労に支障が生じている場合には3級、日常生活にも支障が生じている場合には2級に該当する可能性があります。
社労士
社労士

ADHDの場合は周囲の目が気になって仕事に集中出来ない場合や複数の仕事を並行してできない(マルチタスクが苦手)場合があります。

また仕事のスケジュール管理が苦手であったり仕事を期限どうりに行えない場合、口頭で伝えられた指示が理解できない場合もあります。このような病状があり就労に支障が生じている場合には障害厚生年金3級に該当する可能性があります。

それ以外にも複数の人と話すのが苦手だったり、自分の話を一方的に話してしまう、金銭管理が苦手であったり失くし物や忘れ物、遅刻が多い場合、また掃除が苦手で部屋がゴミだらけになってしまう、音や光などの感覚過敏などで日常生活に支障が生じている場合は障害年金2級に該当する可能性があります。

ADHDでの障害年金請求時の診断書

障害年金の請求において担当医師が作成する診断書は大変重要です。

この重要性はADHDによる障害年金の請求でも変わりません。精神用の障害年金の診断書で特に裏面の日常生活能力の判定日常生活能力の程度の欄が重要です。

日常生活能力の判定は①適切な食事の摂取②身辺の生活保持③金銭管理と買い物④通院と服薬⑤他人との意思伝達および対人関係⑥身辺の安全保持および危機対応⑦社会性の七つの項目に分かれていますが、いずれの項目もただ単にできるできないではなくADHDのご病状やその特質に鑑みてできるできないを判断する必要があります。

例えば他人との意思の伝達および対人関係の項目においても一対一で会話することはできるが複数の人間と会話をするのが苦手な場合などは必ずしもできるとは言えません。

担当医の診断書の作成の段階においてもこれらの一つ一つの項目で自分が何ができて何ができないのかを一つ一つ担当医にご理解いただき実際の病状を反映した診断書を入手することが重要です。

ADHDでの障害年金の受給と就労

精神の障害の場合には就労していると障害年金の受給が認められない場合があります。特にうつ病の場合は就労している場合は障害年金の審査でマイナスの要素として扱われる場合があります。

一方でADHDの場合には必ずしも就労していても障害年金の受給においてマイナスに評価される場合はうつ病ほど多くありません。

このため障害者枠で就労している場合はもとより一般企業で一般雇用で就労している場合でも相当程度援助を受けて就労している場合は就労状況により障害年金を受給できる可能性があります。


ADHDはかつては障害年金が受給できないと言われていた時期もあります。現在でも一部の医師の間ではADHDは障害年金が受給できないとおっしゃる方もいらっしゃいます。しかしADHDで障害年金を受給されている方は大変多く、就労しながら障害厚生年金3級または障害基礎年金2級を受給されている方もたくさんいらっしゃるのが現実です。ご自身でお手続きが難しい場合は専門の社会保険労務士にご相談することをお勧めします。
社労士
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